甲状腺疾患について

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日本で甲状腺疾患を患われている方は500万人とも600万人とも予想されています。そのうち治療が必要な方は約200万人いると言われていますが、実際に治療を受けられている患者さまは約52万人(平成26年度厚生労働省統計)と報告されています。甲状腺疾患の症状はよく見かけられる一般的な症状が多く、甲状腺疾患が原因であるとなかなか気付かれないことも多くあるようです。当科では、診断から検査方法・治療方法のご提案、実際の治療(服薬治療、手術治療、インターベンション治療)まで一貫して行い、多くの患者さまにご満足いただける治療をご提供することを目標に、日々診療に臨んでいます。

 外来について

甲状腺疾患の予約制の初診外来は毎週月曜日および金曜日です。その他の曜日においても受診は可能ですが、その場合は外科外来において基本的な診察と検査予約をしていただき、後日甲状腺担当外来において検査結果説明や必要に応じて精密検査をいたします。

急な病状の変化(頚部の急激な腫れ、痛み、体調の変化)や妊娠判明時などは、予約がなくとも出来るだけ早急な対応が可能ですので、ご連絡ください。かかりつけの先生方からの診療情報提供書がありますと、これまでの症状の経緯などが詳細にわかりますので、診療がスムーズに進みます。診療情報提供書をご持参の上、受診していただきますようご協力をお願いいたします。

 対象疾患について

甲状腺の病気は、甲状腺ホルモンが増減する病気、甲状腺にしこりができる病気に大別されます。甲状腺ホルモンが増加する病気としてはバセドウ病、無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎などがあります。甲状腺ホルモンが低下する病気としては橋本病などがあります。甲状腺にしこりができる病気としては甲状腺の良性腫瘤(腺腫様甲状腺腫、濾胞腺腫)、悪性腫瘍(甲状腺癌、悪性リンパ腫)などがあります。当科ではいずれの疾患に関しても対応が可能ですのでご相談ください。

 検査について

まずは患者さまのご負担の少ない血液検査、超音波検査にて疾患の鑑別を行い、必要に応じて細胞診、シンチグラフィ検査、その他検査を行います。各種検査には予約が必要なため、外来診察時に必要な検査をご説明し、日時を相談の上ご案内しています。

  • 血液検査
  • 主に甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、甲状腺自己抗体、サイログロブリン、腫瘍マーカーなどを測定し、必要に応じてその他の項目を測定しています。
  • 超音波検査
  • 超音波検査は、甲状腺の形状、内部性状、しこりの大きさ、リンパ節の腫れの有無などを、正確に体に負担なく確認することができます。
  • 細胞診、組織診
  • 甲状腺のしこりがどのような細胞でできているかを確認します(別項にて詳細をご説明します)。
  • シンチグラフィ検査
  • 微量の放射性同位元素を用いて、バセドウ病、機能性結節、術後の甲状腺組織の有無などの診断を行います。
  • CT検査
  • 甲状腺および腫瘍の周囲組織との位置関係、血管の部位、その他腫瘤の有無などを確認します。
 その他、必要に応じて検査のご提案をいたします。

 病理検査について

しこりができる病気の場合は、必要に応じて穿刺吸引細胞診を施行しています。細胞診は、しこりがどのような細胞からできているかを確認することで治療方針をご相談するために必要となります。超音波で確認をしながら血液検査とほぼ同等の太さの針をしこりに刺し、細胞を採取します。検査の精度を上げるため、病理検査スタッフ、担当超音波技師と協力して検査を行っています。検査結果の報告にはおよそ1〜2週間のお時間をいただいています。

手術により治療を行われた場合は切除した腫瘍の病理組織検査を行い、最終診断とします。検査結果の報告にはおよそ1〜2週間の時間をいただいていますので、手術を行い退院された初回の外来にて検査結果をご説明しています。

 服薬治療について

甲状腺ホルモンが増減するご病気に関しては、主に服薬治療を行っています。薬の効果、副作用につきましては処方する際に十分にご説明します。また、薬局でも薬の内容について詳細なご説明が可能ですのでご確認ください。

  • 甲状腺ホルモン増加時
  • 抗甲状腺薬、ヨウ化カリウム薬、抗不整脈薬などを症状、血液検査の結果に応じて用います。
  • 甲状腺ホルモン低下時
  • 甲状腺ホルモン薬を症状、血液検査の結果に応じて用います。

 手術治療について

甲状腺にしこりができる病気の場合、病状によってはお薬のみではなく手術が必要となる場合があります。内科的治療、非手術治療を優先し、手術治療は最終的な加療方法と考えています。手術適応、その内容などに関しては外来にて十分にご相談の上、決定いたします。手術自体は最新の手術補助器具を用い、極力小さい傷で安全な手術を心がけ、多くの患者さまにご安心いただいています。

  • 良性腫瘤の場合
  • しこりの場所、数を検討し、甲状腺片葉切除術もしくは甲状腺亜全摘術、全摘術を行います。
  • 悪性腫瘍の場合
  • しこりの大きさ、場所、リンパ節転移の有無などを検討し、甲状腺片葉切除術もしくは全摘術と、リンパ節郭清術を行います。
  • バセドウ病の場合
  • 甲状腺の大きさ、病勢に応じて、甲状腺亜全摘術もしくは全摘術を行います。

 手術の種類

片葉切除術甲状腺の左葉もしくは右葉と、気管上の峡部を合わせて切除します。
亜全摘術甲状腺の3/4程度を切除します。
全摘術甲状腺をすべて切除し摘出します。
リンパ節郭清術甲状腺周囲、必要に応じて側頸部の腫れているリンパ節を切除します。

 手術時の入院について

手術の場合は入院が必要になります。ほとんどの場合は手術前日の入院となりますが、ご病気の種類、手術の内容に応じて1〜2週間前に入院していただく場合もあります。入院のご説明(来院時間、場所、必要な物など)は、入院日が決まった後、看護師が行います。

一般的な入院後の経過
 
手術前日入院夕方、麻酔科医の説明があります。
手術当日手術前朝から点滴をとり、食事はありません。
飲水に関して麻酔科医より指示があります。
時間になりましたら、看護師が手術室までご案内します。
手術後創部の安静、麻酔による副作用を避けるためベッドの上でゆっくりとお休みください。
多少背もたれを上げることは可能ですので、看護師にご相談ください。
術後は、経口摂取は控えていただいていますが、6時間程たちましたら、むせこみに注意しながら氷片をなめていただくことは可能です。
手術後翌日血液検査を行います。
朝食は流動食をお出しします。
午後からは自由に歩行されても大丈夫ですが、首に強い力をかけないよう注意してください。
2日目手術後ドレーンチューブがある場合は抜きます。
ドレーンチューブがない場合は、術後張っていたテープをはがし、張り替えます。
3日目テープの貼り替えの練習をします。
ドレーンチューブがない場合は、退院可能です(退院前に血液検査があります)。
4日目血液検査を行った後、退院になります。
 
手術前日から
手術後3日目
片葉切除時と同じです。
手術後4日目以降血液検査で血液中のカルシウム濃度を測定し、薬での調整ができた時点で退院となります。
退院は、手術後1週間程度を目安にしてください。
 
 退院2~3週後を目安に外来診療を行います。
 創部の確認、血液検査値の確認をするとともに、摘出した甲状腺およびしこりの組織検査の結果をご説明のうえ、今後の方針をご相談いたします。

 インターベンション治療について

甲状腺にしこりができる病気の場合、しこりの中に液体がたまってしまう病気(のう胞)については、より体に負担の少ない治療をご提供できます。

  • エタノール注入療法(PEIT、ペイト)
  • 主にのう胞性の病気に対して、外来検査室にて行います。
    超音波で確認しながら、のう胞に血液検査とほぼ同等の太さの針を刺し液体成分を抜いたのち、無水エタノールを少量注入します。
    エタノールによる脱水効果により細胞破壊を引き起こし、液体成分の貯留を防ぎます。
  • ラジオ波焼灼療法(RFA、アールエフエー)
  • 主に甲状腺にしこりができる病気に対して、入院の上手術室で行います。
    局所麻酔で行い、治療後1泊入院をしていただいたのち、翌日退院になります。
    詳細はこちらのページでご説明しています。


 甲状腺癌の治療について

甲状腺癌は比較的予後の良い悪性腫瘍といわれておりますが、適切な治療を行わなければその限りではありません。甲状腺癌もその他の癌と同様、手術、放射線治療、化学療法の3種の方法を組み合わせて治療を行います。
当科では、手術治療のみならず、その後の外来で行う放射性ヨウ素内用療法、化学療法(分子標的薬)に関しても必要に応じて行っており、多くの患者さまの治療実績がありますので、患者さまのご病状に合わせて適切な治療をご提案させていただくことができます。


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