乳腺疾患について

日本では乳がんの罹患率が増加しており、女性のがん死亡数の第1位となっています。そのような状況の中、乳がんにおける検診、診断方法、治療、患者サポートなどの幅広い分野が急速に進歩しています。当院では2015年から、日本乳癌学会乳腺指導医の資格を持つ医師がより専門的な診断、治療を行っています。

 外来診察について

受付

乳腺疾患の初診外来は毎週月曜日および金曜日です。その他の曜日でも受診は可能ですが、その場合は外科外来にて基本的な診察と検査予約をしていただき、後日、乳腺担当外来にて検査結果の説明や必要に応じた精密検査をいたします。

 検査について

マンモグラフィ

当院ではマンモグラフィ、超音波(エコー)による初期検査を行います。当院はマンモグラフィ検診精度管理中央委員会により認定された施設で、認定資格を持つ技師や医師が所属しています。

読影は検診マンモグラフィ読影資格を持った放射線科医師と乳腺外科医師によるダブルチェックを基本としています。また、超音波(エコー)は専門の技師が精度の高い検査を心がけています。

ct

精密検査の結果により乳がんと診断された方にはCTおよびMRI検査を行っています。CT画像により腫瘍の大きさ、形態、浸潤度、腋窩リンパ節への転移の状況を把握し、MRI検査を用いた腫瘍の広がり診断を併用し、より詳細な腫瘍の情報を得た上で治療計画を立てています。検査は基本的に造影剤を用いて行いますが、造影剤アレルギーのある方、喘息の既往のある方、腎障害の強い方には造影剤を使用しないで行う場合もあります。

すべての画像診断結果はPACS(Picture Archiving and Communication System:ネットワーク上で画像データを表示できるシステム)により外来、病棟、手術室ですぐに確認でき、より高度な診断が可能となりました。また、通常の超音波検査に加え、エラストグラフィ検査が可能なエコー機器を検査室や外科外来に設置し、乳腺腫瘍に対する補助診断として用いています。エラストグラフィ検査とはエコー検査の1つで、硬さを計測して診断材料とするものです。

 病理検査について

精密検査では穿刺吸引細胞診、針生検を積極的に行って診断しています。検査の精度を高めるため、当院では細胞診、組織診検査は病理部のスタッフとともに行っています。その場合の検査は外来通院にて行われます。

また、手術後は必ず病理専門医が切除検体を詳細に解析し、その結果は外来担当医が丁寧に説明いたします。病理検査結果のご報告までには1〜2週間ほどのお時間がかかります。

 手術について

Evidence-Based Medicine(EBM)に基づいた手術を行っています。2014年の年間手術症例は原発性乳がんが15例でしたが、2015年4月より乳腺指導医1名が着任して以降、乳腺疾患の患者さまを多くご紹介いただくようになりました。その結果、手術件数は徐々に増加し、約30件に倍増しています。

原発性乳がんの約60%に対して乳房温存療法を行い、色素法を用いたセンチネルリンパ節生検を併用しています。病理専門医と多くのスタッフの協力のもと、迅速診断を併用した精度の高い手術を行っています。また、低侵襲な手術を行うことにより在院日数の短縮にも努力しています。

乳房再建手術については現在、当院での対応は行っておりませんが、社会的ニーズの増加を考慮し、今後は形成外科医との連携も積極的に検討しています。現時点では、再建手術をご希望の患者さまには近隣施設をご紹介しています。

 化学療法について

毎週月曜日と金曜日に完全予約制で行っています。

現在の術後補助療法は、病理組織検査にて確定されるintrinsic subtypeをもとにSt.Gallenコンセンサス会議、ASCOやNCCN、日本乳癌学会の診療ガイドラインに記載された内容を参考にしたEBMに基づいた治療方法を用いています。術前化学療法も同様に積極的に行い、乳房温存術を施行するケースも増加しています。

治療は基本的に外来通院です。初回導入時のみ入院しての治療を行いますが、2回目以降は外来化学療法専用スペースで行い、常に2名以上の担当看護師が治療に対応し、専任の薬剤師が抗がん剤の調剤および治療薬の詳細な説明を行います。

 チーム医療について

毎月第一火曜日の夕方に乳腺外科医、腫瘍内科医、各部署看護師、薬物療法担当薬剤師を含めた症例カンファレンスを行っています。
カンファレンスは術前から術後までのサポートや合併症を抱える方、進行・再発状態の方のサポートについて他職種間連携を強化し、みなさまによりよい治療、家庭生活を送っていただけることを目的に開催しています。

当院は地域がん診療連携拠点病院です。

近隣の診療所、クリニックとの病診または病病連携を綿密に行いながら、診断・治療および経過観察を含めて当院のみでなく、各施設との連携を積極的に行っています。

当院での診断や治療がある程度落ち着きましたら各連携施設への紹介を行い、継続的な連携体制で患者さまをサポートいたします。


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