ラジオ波治療のご紹介
私たち昭和大学横浜市北部病院では、「甲状腺良性腫瘍、びまん性甲状腺腫および微小乳頭癌に対するラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法の安全性・有効性の評価」の臨床研究を2008年より行っております。甲状腺腫瘍の治療は外科的な切除が中心的役割を果たしますが、非手術治療として甲状腺良性腫瘍に対するエタノール局注療法(ペイト:PEIT)や甲状腺ホルモン療法(チラージンS内服によるTSH抑制療法)も現在施行しています。
しかしながら、十分な治療効果が得られない場合にはラジオ波焼灼療法(RFA)が部分切除と同等の効果や安全性を期待できる療法であると考えています。また、生物学的悪性度の低い甲状腺微小乳頭癌に関してもRFAは手術に取って代わることのできる治療法と推察され、バセドウ病、橋本病においても甲状腺腫の縮小が期待されています。このラジオ波焼灼療法は最近肝臓がんに対して保険適応されて広く普及し、特に小さな腫瘍に対して手術に匹敵する効果を上げています。
この治療法は甲状腺腫瘍に対しても効果が期待されています。甲状腺腫瘍に対するRFA単独の治療成績として、海外で凝固範囲内の86%〜100%の全壊死率が報告されています。また海外(韓国)からは甲状腺RFA施行後の長期成績に関しても報告がなされ、十分な効果と安全性が評価されています。
わが国においてはこの昭和大学横浜市北部病院が先駆者となって甲状腺ラジオ波治療を開始し、これまでに多くの患者さまについて素晴らしい成績を収めてきました。この新しい治療に関して、さらなるご理解をいただければ幸いです。
ラジオ波治療とは450キロヘルツ前後の高周波を使って熱を発生させ、しこりを焼きつぶす治療法です。ラジオ波焼灼術、RFA(radiofrequency ablation)などとも呼ばれます。
ラジオ波治療は局所麻酔(または全身麻酔)で治療可能で、施行中の不安が強い方には軽い鎮静剤のお薬を用いることもあります。
具体的には、超音波にて確認しながら直径1.5mmの電極針を挿入し、ラジオ波を流して熱を発生させ、腫瘍部の細胞を破壊します。局所の温度は50〜70℃まで上昇しますが、皮膚や周囲組織(血管、神経、食道など)が火傷しないように様々な工夫をしております。
治療時間は、治療する範囲(しこりの大きさ)によりますが、4〜5cmのものであれば30分ほどで終了します。しこりが鎖骨の下の方まで潜り込んでいる場合や、甲状腺の左右両葉に存在する場合は時間がかかります。通常は治療前と治療後に超音波検査でしこりの状態、内部の血流、組織の硬さなどを測定しますので、30分ほどの加療時間であってもトータルで1時間ほどのお時間を要します。
図1 電極針の挿入
図2 治療終了後
治療前
治療中 1
治療中 2
治療後
ラジオ波治療はメスでしこりを切り取る手術とは異なります。腫瘍を熱で焼きつぶす治療ですので、治療直後から1週間程度は火傷のあとの腫れた感覚があります。通常、2〜3ヶ月で治療した部位は萎んでいき、腫れていた部位も目立たなくなってきます。
治療後は1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、1年後に受診していただき、CTや超音波にて治療効果の判定を行います。悪性腫瘍の場合は、治療後に細胞診、組織診を行い、がん細胞が死んでいることを確認します。
ラジオ波治療は甲状腺良性腫瘍、びまん性甲状腺腫、および微小乳頭癌(低悪性度のもの)が適応となります。また、甲状腺癌術後再発、リンパ節転移なども状況を考慮して適応対象となります。個々の病状によって異なりますので、詳しくは主治医にご相談ください。
腫瘍を熱で焼きつぶす治療ですので、熱による皮膚および周囲組織の損傷(やけど)に注意しなければなりません。当院でもラジオ波治療開始当初に3例の皮膚熱傷(軽度)が認められましたが、声の神経(反回神経)の損傷や出血などの合併症は1例もなく、皮膚熱傷も後日、軽快治癒されています。
現在、臨床試験として行っており保険適応になっていないため、入院費を含めた全額自費負担となります。麻酔や使用する薬品によって金額は異なりますが、大まかな見積もりは次のとおりです。
入院期間は加療後1泊の経過観察入院が基本となっています。
局所麻酔 | 1泊入院 | 約30万円 |
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全身麻酔 | 2泊入院 | 約35〜40万円 |
ラジオ波治療までの流れ
まずは、北部病院外科を受診していただき、治療の適応を判断します。超音波、採血、CTなどによる検査が必要です。
治療の適応となれば、麻酔方法の選択、治療日程を決定します。