ヘルニア疾患について
太ももの付け根を鼠径部といい、このあたりが出っ張る病気が鼠径部ヘルニアです。この中でも多く見られるのが鼠径ヘルニアです。太もも(大腿部)の方に出るのは大腿ヘルニアと呼び、区別しています。いわゆる「脱腸」と呼ばれるもので、通常は出っ張るだけですが、ときに軽度の痛みや違和感を伴うこともあります。
症状により、時期を選んで手術をします。手術は、鼠径部を4cmほど切開してメッシュを用いる手術(プラグ法)を採用しています。
当院では、日帰り手術と腹腔鏡手術には対応しておりません。また、ヘルニアバンドはお勧めしていません。
入院治療は、月曜日に入院、火曜日に手術、木曜日に退院するという見込みで3泊4日を予定しています。(水曜退院も可能です。)通常、特別な検査は行いませんが、手術に対する一般的な検査(胸部X線検査、心電図、肺活量、採血)を術前に実施します。
術前検査後、手術の2週間前に外来で面談するようにしています。心筋梗塞や脳梗塞治療中の方で、抗凝固薬(いわゆる「血液をサラサラにする薬」)を使用中の方は特別な準備が必要となりますので確認します。
日本ヘルニア学会のホームページでは次のように定義しています。
『嵌頓ヘルニア』 膨隆以外の症状を有し、急に発症した自己還納できない(戻らない)もの。または、用手還納後も症状の消失しないもの。嵌頓になる確率は低いため心配し過ぎることもいけませんが、知っておくことは重要です。嵌頓からさらに血流障害をおこすと緊急に治療する必要があります。
術後は1週間後、および1か月後に外来で経過を見ることを原則にしています。
手術をしたことによってかかる可能性のある病気を術後合併症と呼びます。
再発 | 手術をしてもまた出てしまうことを再発といいます。 |
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慢性疼痛 | 術後1か月から、せいぜい3か月で痛みが落ち着く方がほとんどです。半年以上痛みが続く場合もあり、慢性疼痛と言います。 |
創部感染 | 創が膿むことです。メッシュは人工物ですので確率は低いですが、メッシュが感染すると手術で取り除く必要があります。 |
水腫 | 創の下に水が溜まることもあります。1か月ほどで消えることが多いので、たいてい経過を見ます。 |
血腫・溢血斑 | 血腫の状況により再手術の必要があります。溢血斑は傷の周りや大腿部、陰部にできる『青あざ』で、3週間くらいで自然に消えていきます。 |
その他 | 膀胱損傷など、内臓の損傷も珍しいことですが報告があります。 |
手術をすれば、傷ができます。古傷が痛んで天気がわかるといったことを言われる方もいます。そんな傷をさすりながら「まあ、でもやってよかったんだよね」と思われるように研鑽しています。